大阪地方裁判所 昭和42年(ワ)841号 判決 1968年11月26日
原告
金文洙
ほか一名
被告
新光商事株式会社
主文
一、被告は原告らに対しそれぞれ金一、五〇〇、〇〇〇円宛および右金員に対する昭和四〇年八月二一日から支払ずみに至るまで年五分の割合による金員を各支払え。
一、訴訟費用は被告の負担とする。
一、この判決の第一項は仮りに執行することができる。
一、但し、被告において原告らそれぞれに対し各金一、〇〇〇、〇〇〇円の担保を供するときは右仮執行を免れることができる。
事実及び理由
第一原告の申立
主文第一・二項同旨の判決ならびに仮執行の宣言。
第二争いのない事実
一、本件事故発生
とき 昭和四〇年八月一九日午後九時三〇分ごろ
ところ 摂津市大字別府九〇一地先交差点
事故車 普通貨物自動車(大四ね九一五七号)
運転者 訴外川野幸男
死亡者 亡金健
態様 南から北へ向つてオートバイを運転していた亡健と、事故車との間に衝突事故が起り、そのため亡健は翌二〇日午後九時三〇分ごろ死亡した。
二、事故車の所有
事故車は被告の所有である。
三、損害の填補
原告らは、自賠責保険金一、〇〇〇、〇〇〇円を受領し、これを後記原告らの損害に充当した。
第三争点
(原告の主張)
一、相続関係
原告金文洙は亡健の父、原告下村亨仆は同母として、亡健の本件事故による後記損害の賠償請求権を、各二分の一宛相続した。
二、損害
(一) 亡健の逸失利益
職業 小型ダンプ車運転手。土木業松本秋男方勤務。
収入 一ケ月五〇、〇〇〇円
死亡時年令 二四才(平均余命四四・九七年)
就労可能年数 三一年
生活費 一ケ月一五、〇〇〇円
逸失利益額 七、七三六、八二〇円(ホフマン式計算)
よつて原告らの相続分は、各三、八六四、八一〇円である。
(二) 原告らの慰謝料
原告らは唯一の男子を失つたのであり、それぞれ金一、〇〇〇、〇〇〇円が相当である。
三、よつて原告らは右各損害金合計のうちそれぞれ金一、五〇〇、〇〇〇円及びこれに対する本件不法行為の日の翌日である昭和四〇年八月二一日から右各支払いずみまで、民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。
(被告の主張)
一、亡健は、当時飲酒酩酊し、免許条件に違反して眼鏡を着用せず、かつ突かけを履き、赤信号を無視して猛スピードで突込んで来たもので、本件事故発生につき事故車運転者訴外川野には何らの過失もない。
二、仮にそうでないとしても、亡健の右過失は大きく過失相殺さるべきである。
第四証拠 〔略〕
第五争点に対する判断
一、相続関係
原告主張のとおり認められる。(〔証拠略〕)
二、逸失利益
職業・収入・死亡時年令・就労可能年数はいづれも原告主張どおり認められる。生活費は月間二五、〇〇〇円を要するものと認めるのが相当である。そうすると、逸失利益額は、ホフマン式計算により年五分の中間利息を控除して算定すると、金五、五二六、三〇〇円になる。(〔証拠略〕)
従つて原告らの相続分は各二、七六三、一五〇円である。
三、慰謝料
本件証拠上認められる諸般の事情を考慮すると、原告らに対する慰謝料は各一、五〇〇、〇〇〇円が相当である。
四、過失相殺
本件事故発生については、亡健に対面する信号の表示が青に変る直前に交差点に進入した過失が認められる。そして事故車が普通貨物自動車であるのに対し、亡健乗用の車両がオートバイである点など考慮すると、原告らの前記損害額より、その五割を過失相殺するのが相当である。
(〔証拠略〕)
五、なお被告は訴外川野の事故車運転上の無過失を主張するが、本件全証拠によるも認めるに足りない。
六、そうすると事故車が被告の所有である以上、他に特段の反証のない限り(そして本件において右特段の反証はない)、被告は本件事故当時これを自己のため運行の用に供していたものと推認されるから、被告は、原告らそれぞれに対し、自賠法三条により前記原告らの各損害(逸失利益・慰謝料)より前記過失相殺分五割を控除した各残合計額二、一三一、五七五円から、更に前記原告らが填補を受けた保険金をその相続分に応じて按分した各金五〇〇、〇〇〇円を差引いた各金一、六三一、五七五円の内金一、五〇〇、〇〇〇円及びこれに対する本件不法行為の日以後である昭和四〇年八月二一日以降右各支払いずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金を支払う義務がある。
よつて民訴法八九条、一九六条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 西岡宜兄)